「本当のこと言うとですね」
フィンランドは静かに微笑んだ。
「貴方に付いてデンマークさんの家を出て行った時、少しだけ後悔してたんです」
スウェーデンの眉がぴくり、と動いた。だがその表情が変わることはない。
「でもそれと同時に」
アイスブルーの瞳を懐かしそうに細め、フィンランドは続けた。
「この人だったら、僕のそんなちっぽけな後悔なんて吹き飛ばしてくれるんだろうなとも、思いました」
手の中のマグカップから立ち上る湯気を一吹きして、口を付ける。スウェーデンはその様子をただ黙って眺めていた。


「ごめんなさい、突然立ち寄ってしまって」
「いや……」
スウェーデンはかすかな違和感を覚えた。理由はわかっていた。
「家具とか、服とか、そういうのは置いていきます」
マグカップと机がぶつかる音が静寂に響く。
「ノルウェーさんに伝えてください。好きに使って構わないですって」
ドアベルがひどく無神経に鳴った。
「お待たせしてしまったようです」
フィンランドは微苦笑して立ちあがる。

「お邪魔しました、スーさん」


「またいつか、会える日まで」


「…………」
スウェーデンは何も声をかけることができなかった。
ばたり、と扉が無機質な音をたてて閉じた。

おもむろに、フィンランドの使ったマグカップを取り上げる。
中にはまだ少しだけ、ココアが残っていた。
甘そうだな、とスウェーデンは思った。
ココアはすっかり冷めてしまっていた。


















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ウィーン議定書の話。
フィンは位置的に露様からイジメられる宿命にあってなかなかかわいそうです。
露様にイジメられたせいで、枢軸側についちゃったんだからなぁ……。相当ひどかったんだろうなぁ……。



2008/4/25

サイト掲載 2009/2/17






















おまけでその後







ドアベルが鳴り響く。
「…………」
来訪者を見て、スウェーデンは呟く。
「…………今日はクリスマスじゃねがったはずだが」
「……えへへ」
フィンランドははにかむ。
「ただいま、スーさん」
「…………おぅ」