隣で寝ていた中国がするりと布団から抜け出すのを、まどろみの中で感じていた。
ごそごそと動いていた気配がふいに消えたのに気付き、イギリスは目を開ける。部屋の中に中国はいなかった。
窓から差し込む日差しで、まだ日が上ったばかりだとわかった。基本的に中国は日の出と共に目覚める。イギリスは寝台から起き上がって、もやのかかったような頭で彼を探す。彼の姿はすぐに見つかった。
中国は外で水を浴びていた。水に濡れた肌が、朝の光に照らされてきらきらと輝いて見えた。中国はこちらに背を向けている。上半身裸の彼の、背中の傷がどうしても目に入った。
深い傷跡は、彼が弟とかわいがっていた極東の島国につけられたものだ。中国は背中の傷跡を見せるのを極端に嫌がる。イギリスもこの傷の片棒を担っているので、強くは言えなかった。すべらかな肌に大きく醜くついた傷は、イギリスがつけたわけではないのに、イギリスがかつて彼にしたことを思い出させて。
ふいに、中国が振り返った。
「起きたかあへん」
「……あへん言うな」
すでにお決まりとなった文句を返すと、中国はゆるりと笑った。その笑みを見て、イギリスの背筋をそろりと何かが走った気がした。それは安心とか安堵とか、そういった類のもののように思えた。
近付いてくるイギリスを拒むようなことを、中国はしなかった。
イギリスは中国を背中から抱きしめた。醜くついた傷も包み込むように全て。
肩に額を擦りつけると、中国はくすぐったそうに笑った。イギリスはなんだか泣きたいような気持ちがこみ上げて、中国を抱きしめる腕をさらに強くした。中国は黙ったままだった。
愛してるとか、悪かったとか、そんな言葉を口に出すことはイギリスにはできなかった。だが中国は何も言わない。
そのことに、どうしようもなくすくわれたように思えるのだ。
「おはよう、イギリス」
中国が穏やかに告げた。















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一回やってみたかったネタでした。
つめこみたいことがありすぎてなんかぐちゃぐちゃになちゃった気もする。
そしてにーにがびっちたんすぐる…!





2009/8/5