押し倒されんのちょうひさしぶり、とフランスは実にのんびりと呟いた。白いシーツに広がった金髪に鼻をうずめて、スペインはその耳元で囁く。それどうゆう意味?
「これからやるって時に天井見てるなんてひさしぶりってこと」
「答えになってへんよ」
少し不機嫌さの混じったスペインの声に、フランスは唸って、言わせるのかよ、と軽く毒づいた。お前は覚えてないかもしんないけど、
「ウン十年前に酔ったお前に押し倒されてから、ずっとネコなんてやってねぇよ」
「俺そんなようなセリフ、ウン十年前にも聞いたわぁ」
「ばっちり覚えてんじゃねぇか!」
何だお前記憶あるのか、あるなら言えよ!
「だってあの日朝起きたらフランスおらんかったやん」
口を尖らせて目を逸らして、フランスはほとんど聞き取れないような声で呟いた。だってお前、あの後ちっとも態度変わんねぇんだもん。覚えてないんだと思ってた。
フランスの鼻に小さなキスを落として、スペインは笑った。
「何で態度変える必要があるん?」
あぁそうでしたね。お前はそういうやつだよ。フランスは思ったことを口には出さず、スペインの頬に軽いキスを返した。
「で、そん時は『押し倒されるのちょうひさしぶり、百ウン十年前からもうネコなんてやってない』って言うとった」
「ほんとにばっちり覚えてんだな……」
なるべく触れないように思い出させないようにしてきた俺の努力をどうしてくれるんだ。
「それ聞いていらっとして、そっから何かわけわからんくなった」
それを聞いて、フランスは微妙な表情をする。こいつは静かにきれるから質が悪い。
「で、謝ろう思たんやけど、朝起きたらお前おらんし、声かけても逃げられるし」
「……ごめん」
思わず謝ってから、あれこれ俺が謝られる側なんじゃね?、とフランスは気付く。
だがそんなフランスの考えにはお構いなしに、スペインはフランスの耳の裏側を一舐めして飄々と言う。
「ええよー、そんなこと。フランスはこうしてここにおるわけやし」
今までのことなんて思い出さんでええから。そう言ってスペインはするりとシャツの中に手を忍ばせてきた。
その手を当たり前のように受け入れながら、フランスは何となくあのはじめての日にスペインがきれた理由がわかった気がした。












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最近西イムが熱いんです。
実はイム英とか書いときながら仏兄ちゃんは受けだと思っている僕です。
ひっそり布教していこうかと画策しております。



タイトル提供→is



2009/6/20