お前はずるい、と言われたことがある。ロマーノにだ。唇をぶるぶる震わせて、頬を真っ赤に染めて、お前はずるい、と一言。
聡いフランスはすぐに、スペインのことか、と気付いた。山脈を挟んだ隣国、幼なじみで悪友、そして今はかつてないほど距離が近い。幼い頃のようにキスをし、幼い頃のようではなく同じベッドで寝るようになった。
ずるいってどういうこと?いつも通りを心掛けていたってのんびりと問い返す。ロマーノは一瞬詰まって、泣き出しそうな顔で踵を返して駆け出した。逃げられちゃった。呟いて、フランスは内心少しほっとしていた。
ずるい、なんてこと自覚している。


スペインとの付き合いは長い。だが今のような関係になったことはなかった。幼い頃は兄弟のように育ち、少年と言えるの姿になったあたりからフランスは色んな女や男の上を通り下を通り、スペインはスペインで東の彼の国とよろしくやっていたり、ロマーノを育てていたり。それからフランスの王家がスペインの王位を継いでまた近くなって、それから。


俺、お前のこと昔から好きだったよ。
たまたま恋人と言える人間がいなくて、スペインと二人で飲んでいて、特に脈絡なくぽつりと言った。そうしたらスペインは目を丸くして、ふにゃりと笑って、じゃあキスしよ、と言ってきたので、キスして、以下略。


今のスペインとの関係を恋人と呼ぶのは少々違う、とフランスは考えている。今までの関係がちょっと肌を重ねる程度にまで近付いた、ただそれだけだ。
確かにずるい、と思う。もしかしたらスペインは恋人と呼ばれる関係を望んでいるのかもしれない。だがフランスは望まない。このままが良い。そんな曖昧な感情でスペインの横を占有しているフランスが、ロマーノは気に入らないのだろう。


だけどね、ロマーノ。フランスは心の中で呟く。あいつの隣は、昔から俺の場所だよ。ずるくて結構。この場所を譲るつもりは毛頭ない。
デニムのポケットの中で携帯が震えた。あ、フランス? お前今暇ー? 聞こえたのはいつも通りのんびり調子のスペインの声。暇だよ、今どこ? と、胸のあたりがもぞもぞするのを押さえながら言うと、ご機嫌やね、と返された。
これから会う約束を取り付けて、フランスは電話を切る。今夜はいつものように飲んで、最近良くするように同じベッドで眠るのだろう。この幸せを譲るつもりはないよ、ともう一度頭の中の真っ赤な顔をしたロマーノに言った。






















僕らはおとなになりました












(それでもまだ、こどものようなわがままを言い続けているのです)





























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私はロマをどうしたいんだろう。いぢめすぎである。
いや、これもまた愛ゆえ!




2009/6/28