※西×仏♀(っぽいもの)です。 ※ご本家のにょ仏とは完全に別物の管理人の妄想だと思ってください。 ※人名呼びです。 ※仏♀→フランソワーズさんです。 ※何が出てきても笑って許してくださる方のみスクロールでどうぞ↓ たん、と爪先が軽快にステップを踏む。 少しプリエをためて、軽やかに前に足を上げるアチテュード、右足の爪先だけで立つその姿勢で一時静止、そしてはじけるようにまた動き出す。 よくもあんなに足が上がるものだ、ぼんやりとアントーニョは思った。ぴんとのびた爪先。対照的に腕の動きはやわらかく見る者を誘う。薄い色のレオタードから透ける肋骨、動くたびにふわりと揺れるスカート。額に浮いた汗の雫。その全てがアントーニョを惹きつけてやまない。 くるくる練習場の端から端まで回転して、彼女はぴたり、と止まった。 一拍おいて、アントーニョは全力をもって手を打ち鳴らす。 体を弛緩させたフランソワーズはスペインを気怠げに一瞥すると、次の曲を流し始めていたカセットデッキへ向かった。がちゃり、と大仰な音をたてて曲が止まる。 「何で、いるの」 踊っている時とは打って変わった不機嫌そうな声音でフランソワーズは問う。だがアントーニョがあまりにきらきらした瞳で見てくるので、毒気を抜かれて目を逸らした。バーにかけてあったタオルを取って、ごしごしと顔を拭う。 「いや、家行ったらおらんから此処かなぁって」 「別に家入っててかまわないのに」 遠慮なく顔を拭うのを見て、化粧をしていないのか、と気付く。普段フランソワーズはきっちり綺麗に化粧をしているが、別にしなくとも十分美しいのに、とアントーニョは常々思っている。 「何で?俺はフランが踊っとるの見るんが好きなんやけど」 言うと、フランソワーズは「そりゃどうも」とぶっきらぼうに返してきた。 「あ、別に踊っとる時だけちゃうよ。俺はいつでもどこでもフランのこと好き」 「あー!もう!恥ずかしいやつ!」 今度は怒ったようにタオルを乱雑に投げつけ、フランソワーズはまたカセットデッキの元へ行った。トゥ・シューズの爪先が床に当たってこつこつと音をたてる。 前に、そんな爪先に板の入った靴を履いて痛くないのかと聞いたことがある。 フランソワーズは「昔に比べれば随分良くなったんだから」と答えたが、彼女の裸足の白い爪先は豆だらけで、小指の爪は変形していた。 初めて肌を許された時、その爪先をまじまじと見た。 「汚いでしょう」そう自嘲気味にフランソワーズが笑ったので、割れて白くなった右の親指の爪に口付けたら、蹴られた。 それでも、あの変に歪んだ笑みが消えたのは良かったと思う。爪先で立って踊るフランソワーズは、とても美しい。 「リクエスト聞くわよ」 ふいにカセットデッキをいじっていたフランソワーズが振り返った。 「リクエスト?」 「そ。白鳥でも胡桃割り人形でも何でも踊るわ。音無いけど」 「さっきまで踊っとったの何なん?」 「パキータ」 「お前やん!」 「……そうね」 「じゃ、それ」 お前が見たい。アントーニョが微笑むと、フランソワーズは少し眉根を寄せた何かを耐えるような複雑な表情になった。 無言のままアントーニョを手招きする。 「ここ、立ってて」 絶対動かないのよ。念を押され、アントーニョは体を緊張させる。 フランソワーズが爪先立ったままアントーニョに近付く。ちょうど目線の高さが合った。 そっと肩に手を置いて、そのままもう片方の手を大きくポール・ド・ブラ。片足を横に高く上げて静止。肩に乗せる手や場所を変えながら、アントーニョのまわりを踊る。 響くのは靴が床に擦れる音と、かすかな息遣いだけ。 ひとしきり踊った後、フランソワーズは爪先立ったままアントーニョの背後に立った。手をそれぞれ両肩にかける。耳元で囁いた。 「パキータはね、スペインのジプシーの娘なの。でも実はフランス貴族の娘だったことがわかって、最後はフランス人の将校と結婚してハッピーエンド」 だからパキータは私じゃないわ。 「それどういう意味?」 「察して」 背後に立たれて表情は見えないが、フランソワーズがふわりと笑った気がした。 すっと手が肩から離れる。 「シャワー浴びてくるから家で待ってて」 とっておきのタルト・タタンでも焼いてあげる。 トゥ・シューズにスリッパをつっかけて、フランソワーズはホールを出て行った。 **************************** フランシスのフランス語読みがフランソワでそれを女性名にするとフランソワーズだということに異様に萌えた管理人が勢いだけで書いたブツです。 そしてこれまた管理人の趣味により、仏♀はバレリーナになりました。 で、さらにフランソワのスペイン語の愛称がパコで、じゃ女性ならパキータだね!ということに気付いた管理人。 フルスロットルです。 まことに申し訳ありませんでした。楽しかったです。(笑) 2009/5/17 |