イギリスは中国の薄い唇をひたすらにむさぼっていた。
それはむさぼる、というのがまさに当たっている、けもののような行為だった。
骨の浮いた体を寝台に押し付け口付ける。がさがさした木綿の感触。先の王朝が変わってから、中国は突然野に降り平民のような暮らしをしていた。そして。
部屋は煙が蔓延していて、むん、と覚えのある香りが鼻をついた。
唇を離し顔を見ると、その黒い瞳はどこか遠くを見つめていた。瞳にイギリスの姿が映ってはいるが、本当に見えているのだろうか。
青白い頬を一度はたくと、中国は何回かまばたきをして、やがてイギリスに焦点を合わせた。頬はしだいに赤く腫れた。
「俺を、見ろよ」
そう呟いて、イギリスはまた中国に口付けた。しばらくすると、息が苦しいのか中国の身体はびくん、びくんと跳ねる。
唇を離すと、そのまま首筋を辿って鎖骨の下に吸いついた。赤く痕が残る。そう言えば昔、こうして赤い痕を残すと、中国は何かに似ていると言って笑った気がする。何かは忘れてしまったけれど。あの頃、中国が王族と共に暮らし、きらびやかな衣装を身に付け、イギリスだけでなくやってきた欧州の面々すべてを惹きつけ、アジアの頂点に君臨していた頃。
記憶の中よりもひとまわりもふたまわりも細い身体は、撫でても特に反応を示さない。瞳は気だるげにイギリスを見るだけである。
何故かかっとなって、両手でその細い首を握り絞めた。