「イギリスさん」 腕の中に抱きしめて眠っていた香港に声をかけられ、イギリスははっとして目を開いた。香港の黒い瞳がイギリスをじっと見つめている。その瞳はかの東の大国を思わせて、思わず目を逸らした。 「どうしましたか」 「何でもない」 「そうですか」 その声は子供にしてはひどく冷めていた。それはどこかあの極東の島国を思わせて、イギリスをいらつかせた。 「兄上のことを思い出していました」 香港は唐突にそう言った。イギリスはびくりと体を震わせる。 「イギリスさんは兄上のことを思い出しますか」 「……」 ようよう考えた後、イギリスは目を逸らしたまま答えた。 「……思い出すよ」 「そうですか」 沈黙が流れる。イギリスは耐え切れなくなり強く目を瞑った。 「今でもまだ兄上を想っていますか」 問われて、イギリスは目を開ける。そこには自分とほぼ変わらない体格の香港がいた。 「……お前」 「兄上を想っていますか。また兄上の元へ帰る俺をどう思いますか、イギリスさん」 重ねて問われ、イギリスは自嘲気味に笑った。 「今でもだと?」 そんなの、今も昔もわかんねぇよ。 答えると、香港はあわく微笑んだ。その笑みはやはり彼の兄である東の大国を思わせるものだった。 → |